2021/08/16事例紹介
Case9:分散した株式の集約のための信託
~兄弟に分散した株式のさらなる分散を防ぎつつ、親の望む贈与は続けられるようにしたい~
親の想い
・夫が起業し、一緒に大きくしてきた会社(非上場)なので、会社は子どもも同然
・現在は、長女が継いでくれたが、夫の相続で得た株式は、少しずつ三人の子どもに平等に与えたくて、毎年、暦年贈与をしてきた
・最近、長女から、株が分散するとやりにくくなるから、暦年贈与はやめてほしいと言われたが、できれば続けたい
子の心配
・(長女)母の想いは分かるが、母が亡くなったときに相続争いが原因で姉妹間の中の悪さが表面化し、それが会社の経営に影響を与えるようなことは避けたい
・(長女)配当は、妹たちに渡してもかまわない
・(二女・三女)会社経営に興味も関心もない
信託しないと、こうなるかも
株式が経営に関係のない他の姉妹に移り、何らかの原因で仲たがいなどをしたときは、その株主としての権利を行使されるなどして経営が不安定になるおそれあり
→株式を集約しておくことが必要
株式を集約するためには、資金が必要になるが、多額の資金を一度に工面するのは大変
→少しずつ買い取っていくための時間稼ぎが必要
信託すると、こうなる
母を含めた現在の株主全員を委託者とし、その保有する株式を信託財産とする
→買い取り資金や納税資金を要することなく、受託者が唯一の株主になるためのしくみを作ることができる
株式と引き換えに取得された受益権や、受益権の引き当てとされている株式(信託財産)を対象にした贈与や売買ができる
→信託期間を使って少しずつ後継者が株式を集約することができる
信託のおおよその内容
①母と長女との間で信託契約を締結する
②信託するのは、株式(自社株)である
③受託者たる長女は、発行会社に対する議決権等の行使や配当金の受け取りなどを行う
④受託者たる長女は、受け取った配当金相当額を母へ交付する
⑤母から受益権の贈与を受けた長女、二女、三女に対し、受託者から配当を渡す
⑥長女は、他の姉妹が有する受益権を買い取ったり贈与を受けたりして集約していく
※こちらの事例は、実際に関与した実例をベースに、プライバシーの保護や説明の便宜等のためにアレンジを加えたものです。